中高生の頃ならいざ知らず、大学の頃から今のこの歳になるまで、俳優や映画やテレビドラマの話を身の回りの人とするなんて、なーんか恥ずかしいことでした。高校時代も大学時代も映画や演劇好きな友達というのはいたけれど、純粋なミーハーっていうのは少なくて、話すといえばどっかオタクの映画研究のようなイデオロギーぽいことが出てきて、「ウーンこの手の話もおもしろいけど、ちょっと違うな」というのが私の思いでした。

   俳優のあの色気、仕草、表情、あのセリフ、なーんて細かいところに喜びを感じて、キャーキャーいうなんて、最近では密かな楽しみでした。思い切って、話しても「へーそう。おもしろかったんだね。また教えてね。」というあっさりとした反応で、頭でわかってはくれても、心で感じてはくれていないのだなということがありありで、ちょっと退いてる感じがしてしまうのです。

 でも、たまーにたまーに、ビビッとアンテナが通じる人がいて、案外外見や、普段の仕事ぶりからはとてもそういうミーハーな人には見えない人だったりして、意外なその人物の内面を見た喜びと、仲間が見つかった喜びで小躍りしてしまう時があります。
 そんな仲間を見つける大きなきっかけとなったのが、1996年放映の「ロング・バケーション」でした。このドラマでいい歳した人達(40代から60代)も木村拓哉のファンですとおおっぴらに言ってるのをみました。女性雑誌で「カイワレ族の反乱」とか自分の息子たちの子育てや息子たちの世代の事を本に書いた女性のお医者さんで結構美人でモデルもやってる人で、(うーん名前ど忘れ)、その人が「ロンバケ」が大好きでその後の「ラブジェネは許せないっ」、「あの松たかこ(もちろん役柄よ)のばか加減は何だ!」みたいなこと書いていて、自分の友達もそれ以上の年齢の人もみんなそう、「ロンバケ」と木村拓哉に夢中みたいなことおおっぴらに書いていました。

 そこで、あっ結構みんなそうなんだ。精神年齢って10代後半から20代の頃からあんまり変わらないんだ。みんな仕事があったり、子育てをしたりする中で大人っぽく振る舞うことを、周囲から期待され自分自身でも強制していたのかな。でも木村拓哉をみて「素敵っ」て思う気持ちは60代になっても変わらないんだと思うと、みんな愛しいなという気持ちで、連帯感を感じてしまいます。

 本題(本題なんかあるの?)に入る前にぐだぐだと書いてしまいましたが、こういう喜びが毎日の励みやうるおいになることって、すごくあると思うんです。私たちの生活って物質的には人類史上類を見ない豊かさですよね。ちょっと前は私たちの子供時代なんか、結構食べることに事欠くことってありましたよね。食事には不自由しなかったけど、ケーキやお菓子ってわりと憧れの存在で、12月24日生まれの私は、みんなが年2回食べられるデコレーションケーキを1年に1回しかケーキが食べられない不公平を感じてる子供でした。その頃はおいしい物や豪華なおやつって特別のものだったでしょ。今はそんなこと全然ないですもん。なんでも食べられるけど、特にこれが食べたいっ!ていう憧れの食べ物ってないですもんね。たべものでも、物でも、物質的には全く不足がなくて、でも次から次へとものをほしがるというより、欲望だけを刺激されっぱなしでいっつも欲求不満の人って多い。でも必要以上にみんなが物を持ちすぎて、いつもいつも物に振り回されてるってのが私を含めて、多くの人の生活ではないでしょうか?

 そんな生活の中で、心が満たされる瞬間やあの感動を周りの人と話し合えたら、なんか喜びが2倍3倍になるような気がするのです。そんなきっかけを与えてくれたのが、このホームページです。オーナーとは同じ職場にいるのにもかかわらず、仕事中はほとんど言葉を交わすこともないのに、メールで主に「ロンバケ」や木村拓哉くんのことで密かに話が盛り上がっている仲です。面と向かっては話しにくいし、自分はその気でも相手は忙しくてそーんなクダラナイコトにとても取り合ってもらえないとか、おもしろいドラマをみてすごーく感動したけれど、こんな話誰にも恥ずかしくてできないっていうことありますよね。そんなとき夜中にふっとワープロの前だと自分の思いをつらつら書けるってことあるでしょ。そういう文をみて同じ思いの人が、自分だけじゃなかったんだって、同じ様に感じている人いたんだって、うれしがってくれることきっとあると思うんです。私自信が一番それを期待しています。それもインターネットでうんと遠くの人と共感するのも楽しいけれど、このホームページはわりと地域密着型のホームぺージにするらしくって、高知の近場の人達とこんな思いがはなせるってのがうれしい!

 というわけで、私の今一番気になっている俳優チョウ・ユンファ(周潤發)のお話しをしていきましょう。(私の友達がどうしても覚えなくてチョウ・ヨンピルとしかいいません。)チョウ・ユンファですからね、お間違いなく。

 彼は香港出身の映画俳優で最近高知でも上映されている「アンナと王様」の王様役を演じている俳優です。1955年生まれで今年45歳です。1980年代の香港映画界を背負ってたっていた人で、亜州影帝(アジア映画界の帝王)という異名を持っていました。テレビ出身の俳優さんでテレビの「上海灘(上海バンド)」という戦前の上海における租界を舞台に、中国系のギャングの世界に生きたある若者を描いた作品で一躍有名になり、中国語圏で大人気になった俳優です。その後映画界で香港ノワールもの(ギャング映画)、コメディー、ロマンティクもの、時代物(もちろん中国のね)、戦争物(やはり香港ということで日本人(日本兵)が露骨に悪者になってます。)なんでもこなす俳優です。

 香港映画界は東洋のハリウッドといわれ、作品を量産することで有名です。ですから低予算・超短時間でつくられるので、映画も「下手な鉄砲も数打ちゃあたる」的なものも多く、チョウ・ユンファの映画もハズレの作品も結構多いのです。日本映画やアメリカ・ヨーロッパ映画のパクリを堂々とやってくれちゃっているところなんか結構笑えます。

 それに、香港の娯楽映画の傾向なのでしょうか、ギャング映画で人の撃ち合いもここまでやらなくてもというほどトコトンやるんです。普通ヒトは1発か2発で死に至るでしょう?ところが、ほんとにピストル1丁の中にこんなに弾があるのかというほど撃ち合うし、人の殺し方も結構残酷なとこあるし、アメリカ映画やヨーロッパの映画のように洗練されていない部分もたくさんあります。ですからなかなか好きになれない人も多いでしょう。でも俳優や女優のあの銀幕のスターという感じはやっぱり今の日本映画とはひと味もふた味も違います。
 
 今の日本映画やテレビって、俳優がどうしても庶民的でスター性というのをあえて少な目にしているかんじがありません? 昭和30年代の日本映画の全盛期の頃のスターは本当に雲の上の存在で、近寄りがたいけれどすごく夢を見せてくれたと思いませんか? といっても若い方々には、判りづらいと思います。ケーブルテレビの35チャンネルで昭和30年代の日本映画をよくやってます。その映画で見る石原裕次郎とか浅丘ルリ子とか北原美枝、小林旭、加賀まりこ、木暮三千代、若尾文子、京マチ子、吉永小百合(漢字が間違ってると思いますがごめんなさい。)等々もう数え上げればきりがないほどすごく素敵ですよ。今の俳優の比ではないほど、魅力的でその美しさたるやすさまじいです。

 題材も古典から現代、前衛と、幅広く今の日本映画もどんどんおもしろくなっているけれど、その迫力俳優のすごみではやっぱり昭和30年代が全盛期かなという気がします。お時間がある方はぜひその頃の日本映画も見てください。「太陽にほえろ」の頃の裕次郎なんか私には、タダの太ったアブラギッシュなおじさんにしか見えませんでしたが、昭和30年代はちっともハンサムではないのに、すごく魅力的な男性です。男も女もその人なりのオーラが発する時期というのがあるのかな。裕次郎なんて独立して自分の作りたい映画を作り出した頃から魅力なくなってきましたもんね。突然オーラが消えちゃった。オーラがあるうちはどんな駄作に出ても光り輝くのに、消えたとたん作品やスタッフが良くてもその人が輝いてないってことあるような気がします。

 香港の俳優はこのスター性とオーラを持ち続けていて、特にチョウ・ユンファ(周潤發)はその代表でしょう。私が好きな香港映画は主に1980年代の物で、最近のウォン・カーウァイとかクリストファー・ドイル系は好みではないので、1990年代についてはほとんど知りません。1997年の香港返還を前にチョウ・ユンファがそれまで得た映画賞を全て香港映画界に返して、先にハリウッド進出した監督ジョン・ウー監督の要請に応えて、ハリウッドにその映画俳優としての本拠地を移したのが、ユンファ40歳の時。40歳にして、よりビッグな挑戦をした彼をすごいと思いながら、もう香港にいってもユンファはこの空の下にいないんだ(香港には2回しかいってませんが、最初の時ツアーコンダクターがユンファのマンションを教えてくれました。)という寂しさと、いつ彼の作品をみられるんだろうという不安がありました。私は日本の高知から、早く彼の作品を観られる日を夢に見ながら、ただただ待つしかありませんでした。

 それがようやく「アンナと王様」で実現しました。ハリウッドでの主演第1作は「リプレイスメントキラー」といってミラ・ソルビーノと共演したギャング映画でした。まあ彼の英語力からいっても、香港でのギャング映画への出演の多さにしても、こういうあまり英語をしゃべらないガンを撃ち合う役は仕方ないかなというあきらめの気持ちもあり、また高知で上映しておらず(ビデオにはなっていますが)、あえてみる気もしませんでした。

 しかし今回はやっとまともな役がついて、相手はなんといってもジョディー・フォスターです。「相手にとって不足はない」じゃありませんか。ジョディー・フォスターのおかげかもしれませんが、結構映画の宣伝も多いです。彼が香港映画のスターだった頃は、日本の地方の映画館で香港映画を観ることはなかなかできませんでした。今でこそ、高知でも自主上映でウォン・カーウァイの映画なんかが上映されて、金城武くんのファンの女子高校生がわんさか来ています。それがやっと普通の映画館でチョウ・ユンファの映画が観られる様になりました。この後彼の作品は2〜3すでに決まっているようですが、それが高知で上映されるとは限りません。今回はできるだけたくさんの人に観てもらえればと願っています。

 映画としては、ユル・ブリンナーの「王様と私」よりはずっと史実に近く、イギリスやフランス等の列強の脅威から何とか独立を維持しようとしていた、当時のタイの事情にも言及しています。ユル・ブリンナーが主演した「王様と私」は日本人の私から観てもアジア人をばかにしている西洋人の視点がいやというほど感じられて、あのSHALL WE DANCE? の名曲・名場面を差し引いても、もう一度見たい映画ではありません。今でもタイはあの「王様と私」の上映は許可されていないそうですし、今回「アンナと王様」もロケ地としてタイに入ることは許されず、ロケはマレーシアで行ったそうです。

 チョウ・ユンファの魅力は大人の男性の魅力・包容力という点かな。年齢からいっても美しいお顔と姿態というわけにはいきません。年齢どおりのがっちりしたお体とお顔です。派手なアクションもありませんし、恋愛だって密やかな感じです。ユンファは背が高く、洋服がすごく似合うのですが、今回はタイの民族衣装で髪型もあれー?というところもあるんですが、それでもやっぱりあの表情と笑顔は本当に素敵なんです。あんまり派手さのない映画ですが、アジア人にこんなに素敵なひとがいるんだってことを知るためにも、どうぞビデオが出たらぜひ観てくださいね。
(00/02/24)